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新井素子『・・・・・絶句』ハヤカワ文庫


高校生の娘が、何か面白い本はないかと言う。自分が高校時代に読んだ本を思い出してみて、印象深かった本って.....『韓非子』とか、アシモフのファウンデーションとか、『遊歩大全』とか。どれも娘が面白がりそうもない。父親としては読んでおいてほしい本もあるけれど、当時の私と今の娘じゃ精神年齢がかなり違う気もするし、こういうものは私の価値観を押しつけても意味がないし。はて、とか考えていて、ふと思い出したのが、新井素子。そう言えば結構読んだ。『・・・・・絶句』とか、面白かった記憶はある。と言いつつ、ストーリーは完璧に忘れた。

ということで、娘にはとりあえず『・・・・・絶句』を薦めたのだが、高校の図書館にはないと言う。私の本は実家だし、仕方ない、また買うか、とか思ってたら、市の図書館で発見。借りてきた。借りてきたら、自分でも読むよね、そりゃ。

高校時代に読んだときの感想は、ほとんど憶えていないのだけれど。ほぼ30年ぶりに読み返してみての感想。

日本語の誤用とか、情報が不正確なところとか、たくさん指摘できる。でも、それを補ってあまりあるだけの、躍動感というか、とにかく登場人物がみんな生き生きしてる。たまたま下に書いた『海辺のカフカ』もぶっ飛んだストーリーだったけれど、ゼンゼン負けていない。いや、ぶっ飛び加減で言うと勝ってるかも。にもかかわらず、登場人物が等身大で泣き、笑い、叫び、縦横無尽に走り回る。設定もご都合主義なところもあるけれど、そんなことを指摘するのは野暮だと思わせるだけのものが、『・・・・・絶句』には、確実に存在する。それが何かは.....何だろう。若さ?(笑)

ストーリーの背景には、人類の存在意義とか、生命の重さとか、かなり深刻なテーマが横たわっている。われわれ人類が例えばシロアリを駆除するのと、人類よりも文明が進歩した宇宙人が人類を殺すのは、本質的に同じ行動なのだけれど、そういう考え方に反発してしまう人は、この本が言おうとしていることを理解できないと思う。もちろんこのテーマに対する答えは提示されてなくて(そんなもん誰にも答えられない)、でもポジティブに生きよう、みたいな感じで終わってしまうんだけど、ごまかし感がないのは著者自身がそう信じているからだろう。と、ヘビーなことを書いたけれど、基本的にはドタバタです。秘密のアジトの入口 ― から出たら、そこに、女の子が一升びんかかえて花柄のござしいてお弁当ひろげてるとか、一見棒、実はレイ・ガン、更に実は如意棒とか、不覚にも笑ってしまった。30年前の私も笑ったろう。

いずれにせよ、読み手にも、若さというか、柔軟な発想を要求する本である。


更新:2012.11