本棚>ある生涯の七つの場所ノート>挿話

水の上の顔


書誌

シリーズ
赤い場所からの挿話 X
所収
『夏の海の色』中央公論社, 1977
『夏の海の色』中央公論社(中公文庫), 1992
初出
『海』8巻4号(1976年4月号)

設定

舞台
東京
アイテム
大沼の作った赤い表紙の物語帖
時代
私2が旧制中学1年から2年になる春休み~中学2年の年末

人物

私2
本文中では「私」。
入院中。
英二の母
母の妹。高台に住む。私2を預かっている。
大沼直衛
山の手の中学生。男爵家の若当主。
平譲
山の手の中学生。大沼の友人。
菊子
本文中には「撞球場のお内儀」と書かれ、名前は出ない。小さな撞球場をやっている。

考察

私2の学年

挿話の冒頭、私2が**理科研究会の説明会に行く場面に、叔母の家に寄宿していた私が春休みの暖かい日もちろん同じ中学から来ている顔馴染みなどはなく とあるので、私1が旧制中学に入学後、叔母の家に預けられていたときに挿話が始まることが分かる。また、挿話の後半の 私は叔母に急用ができたと言って、平の待っている喫茶店に出かけた。 から、初冬の頃にも私2は叔母の家にいること、暮れも近いある日曜の午後 より、挿話が終わるのは年末であることが分かる。

主人公である私2の学年の記述はないが、もちろん同じ中学から来ている顔馴染みなどはなく の表現を考えると、私2は中1ではない。中1ならば、入学式前の春休みに、同じ中学に顔馴染みがいないのは当然なので、上の引用文は意味をなさなくなる。

本挿話の時点で、私2も大沼直衛も中学生である。本文中、私は、話の内容から、二人が二年は上級生であることがわかったがより、大沼は私2よりも2学年以上上級であることが分かる。上記のように、本挿話の時点で私2は中学2年以上の学年である。旧制中学は最高学年が5年生なので、私2が2年生であれば大沼直衛は4または5年生になり、私2が3年生であれば大沼直衛は5年生になる。先の引用文が「二年上級生」とあることを考えると、私2が2年生で、大沼は4または5年生が妥当なように思われる。私2が3年生であり、2年以上上級だと思ったのであれば、大沼は5年生にしかなり得ない。その場合、「二年上級生」という表現ではなく「二年上級生」の表現が自然だろう。

これより、本挿話は、私2が旧制中学1年から2年になる春休みから、中学2年の年末にかけての時期のものと考えられる。

本挿話の年代については、赤XIとも関連がある。赤XI の考察も参照。


更新:2012.10