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夜の入口


書誌

シリーズ
橙いろの場所からの挿話 XIII
所収
『雨期の終り』中央公論社, 1982
『人形クリニック』中央公論社(中公文庫), 1992
初出
『海』12巻1号(1980年新年号)

設定

舞台
東京:練馬
アイテム
送電線の鉄塔の下塗りの橙
時代
私2が帝国大学休学後(入学後5年目)の初夏~初冬

人物

私2
本文中では「私」。
私2と一緒に住んでいる。
仁木
本文中では「叔父」。母の弟。六年ぶりで除隊して私たちの家に帰ってきた。
桜田房之助
桜田家前当主。故人。私の遠縁。私1のアメリカ行きに尽力する。
桜田弦一郎
桜田家の現当主。満鉄総務部長。
谷健次
出版社の編集主任。
井口
出版社の編集員。
南部修治
仁木の友人。社会主義者。
楠木伊根子
名前のみ。南部修治の婚約者。
瀬木譲治
叔父の昔の仲間。大学講師から転職し、満鉄に勤めていた。

考察

私2の学年

本文冒頭に、大学の最後の年は、一年休学したあとだっただけにとある。橙XIIで描かれるように、私2は大学3年の1月から1年間休学しているので、本挿話は休学明けの年、つまり大学入学後5年目の出来事になる。

初夏の午前の風が叔父が満鉄の総務部に就職が決ったのは冬に入ってからであった。叔父は半年あまりの中途半端な気持に終止符を打てたからであろうより、季節は初夏~初冬の半年間である。

仁木の兵役期間

挿話のあちこちで、仁木が軍隊に行っていた期間は6年であると書かれる。また、六年といえば大へんな長さだ。だいいちまだ青臭かった中学生がもう大学を出るんだからなの記述もある。

一方、赤XIIで私2や母と同居していた叔父は、赤XIIIすでに南九州の聯隊に入っていたのでと書かれるので、仁木が徴兵されたのは赤XIIから赤XIIIの間、つまり私2が旧制中学4年生の夏~秋のことと考えられる。これから大学入学後5年目までは、9年近い。赤XIVで仁木は一度東京に帰って来、また連隊に戻るが、この時を起点としても8年になる。

本挿話から6年前を考えると、旧制高校2年生となり、青臭かった中学生に合わなくなる。

なぜこのような矛盾が生じたかについては、考えるための材料がなく、よく分からない。


更新:2012.12