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夜の鐘


書誌

シリーズ
橙いろの場所からの挿話 I
所収
『雷鳴の聞える午後』中央公論社, 1979
『雪崩のくる日』中央公論社(中公文庫), 1992
初出
『海』9巻8号(1977年8月号)

設定

舞台
山国の都市(松本)
アイテム
東京から高等学校がある山国の都市まで乗った、蒸気機関車の汽罐の火
時代
私2が旧制高校入学直前の3月~4月

人物

私2
本文中では「私」。山国の旧制高校(旧制松本高校)文乙に入学。
ひとり東京に残る。
大沼直衛
男爵家の若当主。大学予科に行っている。
長岡美根子
山国の都市にある長岡医院のひとり娘。女医。
長岡先生
美根子の父。山国の都市で開業している医師。
秋山貞二
私2が通う高校の一年先輩。理乙。本文中には「秋山」と書かれ、名は出ない。
駒子
私2が幼いころに近所に住んでいた娘。

考察

舞台

高校名および高校のある都市名は、本文中には出ない。しかし、旧制高校があること、山国であること、東京から蒸気機関車で1日で着くことから、高校のある都市は松本と考えられる。著者自身も旧制松本高校を卒業しているので、自身の経験をもとに舞台を組み立てたのだろう。本文中に現れる、彼は「サンジロ」とか「ゲンコウジ」とか「オーガハナ」とかいう聞きなれない名前を並べての地名も、「サンジロ」が美ヶ原南方の三城牧場、「ゲンコウジ」が松本市市街地北東にある玄向寺、「オーガハナ」は橙III で書かれているように王ヶ鼻(美ヶ原:2008m)とすれば、すべて松本周辺の地名である。特に王ヶ鼻は旧制松本高校の寮歌にも歌われている。三城牧場や王ヶ鼻は、著者の旧制高校時代の友人である北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』・『どくとるマンボウ途中下車』にも登場する。また、橙VI まで旧制高校時代の挿話が続くが、高校を旧制松本高校と考えて矛盾が起こる挿話はない。

私2の学年

本文より、私2が旧制高校入学のために東京を発って松本まで移動した日と翌日の出来事を描いていることは明らかだが、それが3月終わりなのか、4月初めなのかは分からない。

駒子の亡くなった年

赤I より、駒子が亡くなったのは私2が小学校1年生の1月であった。それが、本挿話では、ぼくはまだ小学校に入る前でした駒子ちゃんのご命日は三月二日でしたと変更されている。この件についての詳細は、考察→私2の学年の問題 参照。


更新:2012.12