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エトルタ七夜


書誌

シリーズ
藍いろの場所からの挿話 XII
所収
『椎の木のほとり』中央公論社, 1988
『椎の木のほとり』中央公論社(中公文庫), 1993
初出
『海』15巻12号(1983年12月号)

設定

舞台
スペイン(ヘローナ)・トゥールーズ→パリの列車・パリ・エトルタ
アイテム
ルイの住んでいる藍ペンキの船
時代
1938年初冬

人物

クラウス・シュトリヒ
本挿話の主人公。ノルウェイ人。
ルイ・ムーラン
スペイン内戦で国際旅団に入るが脱走。フランス人。フェロンとシュトリヒを助ける。
マチュウ・スィヤール
スペイン内戦で国際旅団に入るが脱走。フランス人。フェロンとシュトリヒを助ける。フェロンとは高校以来の親友。
ルネ・フェロン
もと国際旅団。フランス人。パリで書店を経営している。
エレーヌ
エトルタにあるフェロンの別荘の使用人。

考察

本挿話の構成

本挿話は4つの場面から成り立っている。時系列順に、スペインのカフェの場面・トゥールーズからパリへの列車の場面・パリの場面・エトルタの場面である。このうち、後の3場面は10日間ほどの間に起こっている。スペインのカフェの場面は、数ヵ月前、彼はG**のカフェの奥に坐ってビールを飲んでいた。より、その数か月前である。

スペインのカフェの場面の時期と場所

この場面は、藍IXで語られる、ルイ・ムーランとマチュウ・スィヤールの脱走後である。藍IXは、脱走した二人がトラックでヘローナ(Girona または Gerona)へ向かうシーンで終わっている。その後二人はフランスへ脱出している。ヘローナ近辺~国境付近に、名前がGで始まり、内戦中でもカフェが営業し、脱走兵がいても目立たないような大きな街はヘローナ以外に存在しない。よって、この場面の舞台であるG**はヘローナであると思われる。時期は藍IXの直後と考えられるので、1938年秋であろう。

残りの3場面の時期

スペインのカフェの場面の数か月後にトゥールーズからパリへの列車の場面があり、そのままパリの場面へ続き、その3日後から一週間ほどがエトルタの場面になっている。エトルタの場面の最初に初冬にしてはよく晴れた日で、とあるので、この3場面はいずれも1938年初冬と考えられる。

こう考えた場合、パリの場面の奥でラジオがニュースを早口に喋っていた。クラウスは椅子に腰を下し、耳を澄ましていたが、ミュンヘンで何かが行われていると言っているだけでが時期的に合わない。ミュンヘン会談を示していると思われるが、ミュンヘン会談は1938年9月で、初冬までは2~3か月ある。しかし、パリの場面を1938年9月とすると、藍IXはその数か月前なので、季節が合わなくなる。そのため、ここでは、やはり上述の通りパリの場面は1938年初冬としておく。


更新:2013.02