本棚>ある生涯の七つの場所ノート>挿話

国境の白い山


書誌

シリーズ
藍いろの場所からの挿話 III
所収
『国境の白い山』中央公論社, 1984
『国境の白い山』中央公論社(中公文庫), 1992
初出
『海』14巻2号(1982年2月号)

設定

舞台
カタルーニャ地方の国境近くの山村
アイテム
クレメンテの藍色の服
時代
1929年ころ~1938年末

人物

アロンソ(アロンソ・エノオ)
本挿話の主人公。
ミゲル(ミゲル・エノオ)
アロンソの父。ビトリアとファナが村で暮らせるよう協力する。
アロンソの母
アロンソの母。無口。
ビトリア
ファナの母。村に流れてきた旅の女。信心深い。
ファナ
ビトリアの娘。
村長
ビトリア・ファナ母子を住み込みで雇う。
クレメンテ(クレメンテ・マルザ)
村長の息子。サラゴッサで弁護士をしている。
村長の家の爺や
クレメンテの爺や。

考察

挿話の年代

本挿話は、ビトリア・ファナ母子が村に流れてきてから、アロンソが村を出て行くまでの10年ほどの出来事を描いている。主な出来事を簡単に整理すると、次のようになる。

ビトリア・ファナ母子が村に流れてくる
アロンソが工場に勤める
復活祭の休みにアロンソがファナに再会する
ビトリア・ファナ母子が村に来てから「もう七、八年になるわ」
2年後、ミゲルが亡くなり・アロンソが村に帰る。
アロンソが工場に勤めるようになってから二年ほどたって工場に組合運動員が来る。
その年の夏、ミゲルが亡くなり、アロンソが村に帰る。
間もなくファナとクレメンテが村に帰る。事件が起こり、アロンソが村を出る。
アロンソが家に戻ってから何ヵ月もたたないうち、ファナがバルセロナから帰ってきた
間もなく村長の息子が村に戻ってきた

最後の事件当時の内戦の状況として、本文中にはすでにマドリッドもサラゴッサも反革命軍が支配していて、バルセロナに向けて攻撃が開始されていると書かれている。マドリード陥落はバルセロナ陥落よりも後なので、多少の混乱が見られるものの、これは1938年末ごろの状況と考えてよいと思われる。そのため、事件は1938年末の出来事と考えられる。ビトリア・ファナ母子が村に流れてきたのは、それから9年ほど前、1929年前後になる。

挿話の舞台

挿話の舞台になる村であるが、本文中のその山が国境の山で、山の向う側がフランス領であることをアロンソは子供のときから両親に聞かされていた。より、スペインのフランス国境近くに位置すると考えられる。また、上記のように、挿話の最後の事件は1938年末ごろと考えられるが、当時村にはまだ反乱軍は来ていない。これらから、1938年末に政府軍の勢力範囲にあったフランス国境近くの村ということになるので、本挿話の舞台はカタルーニャ地方と考えられる。


更新:2013.02